日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
米国では、家計の過剰債務調整が進み、成長が加速するための土台が整ってきた。新年度予算成立、連邦政府債務上限引き上げなどのハードルを政治が乗り越え、さらに歳出自動削減を9月末に停止できれば、2014、15年は高成長が見込まれる。そのため、FRBは9月18日の会合でQE3(量的緩和第3弾)の縮小(資産購入の減額)に動く可能性が高い。政策金利引上げは2015年まで見込まれないが、長期金利はQE3の出口を見越して上昇し始めた。
結果、これまでより高い利回りを求めて新興国に流入していた資本が逆流し始めた。インド・ルピーやブラジル・レアルなど新興国の通貨安が6月以降急速に進行。対外債務の規模(GNI比)が1997年のタイが75%だったのに対し、2011年のインド18%、ブラジル17%と低く、アジア通貨危機の再来の可能性は低い。しかし、これら新興国では、通貨防衛のための金利引上げで、減速していた景気がさらに冷え込んでいる。
ユーロ圏では、2013年4〜6月期実質GDPが7四半期ぶりにプラス成長(前期比年率1.1%)となったが、ドイツが主にけん引した結果で、周辺国では景気後退が続いている。銀行同盟、財政統合など共通通貨ユーロを維持するために必要な制度整備も遅々として進んでおらず、9月22日のドイツ総選挙後も情勢は変わりそうにない。欧州の景気低迷は長期化が見込まれる。
中国は海外との資本取引を規制しているため資本流入と逆流の影響はほとんど受けていない。しかし、これまでの投入量を増やすことによる高成長は、生産年齢人口が2011年をピークに減少していることや、所得格差の拡大、環境問題の増大などから、持続不可能。習・李新体制も、生産性向上による成長への経済構造改革を行うと同時に、城鎮化(都市化)による需要創造で7%程度の潜在成長力へのソフトランディングを図っている。ただ、期待成長率の低下による一時的な投資急減のリスクは抱えている。
2013年の世界の実質GDP成長率は、世界全体が3.1%と前回予測から0.2%下方修正で、2012年成長率3.3%をわずかながら下回る。2013年の米国は1.7%と前回予測より0.1%下方修正も、2013年後半以降成長は加速すると見込む。ユーロ圏は、2013年▲0.6%、2014年0.1%と景気低迷が続く。新興国経済は5.0%と、前回予測より0.4%下方修正。インド4.4%は1.1%下方修正、ブラジル2.0%、中国7.5%はともに0.3%下方修正。
日本経済は、2012年4月から景気後退に陥っていたが、11月を底に景気回復局面にある。2013年4〜6月期実質GDP成長率は2.6%と3四半期連続のプラス成長となった。
「この勢いなら消費税率引き上げの景気下押し効果を乗り越えられる」「今上げないでいつ上げる」との意見が多く、本予測でも2014年4月に5→8%、2015年10月に8→10%の消費税率引き上げを前提とした。しかし、2014年4月3%分の引き上げで家計の可処分所得が8兆円減少する。限界消費性向を0.3とすると、2.4兆円(GDP比0.5%)の有効需要が減少することになりインパクトは大きい。本予測では、投資減税、規制改革、公共投資などの補正予算を含む新たな経済対策で2014年度に2兆円の有効需要が追加されると前提して、2014年度成長率は0.1%とかろうじて景気腰折れ回避と予測した。しかし、この成長ペースでは、2015年度までにデフレ・ギャップが解消しないため、デフレを脱却して「2年程度でインフレ目標2%」を達成することは困難な見通し。
10月上旬に予定されている安倍首相の消費税率引き上げを巡る決断と、年末までに組み上げられる新たな経済対策によっては、本予測は見直しが必要になる。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる資料:IMF、
予測は日立総研