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JCI(Joint Commission International)

    所属部署 研究第三部 社会・生活グループ
    氏名:竹内乃布依

    JCI(Joint Commission International)とは

    JCIとは、米国で医療機関およびヘルスケアプログラムの認証を行っているJC(Joint Commission)の国際部門として1994年に設立された、病院機能評価機構です。認証だけでなく、コンサルティングや教育も行っており、評価の対象は、病院、介護、在宅診療、研究機関など多岐にわたります。主な認証の基準は「患者、そして医療スタッフの安全」、「患者目線でのケア」、「患者やその家族の権利尊重」、「医療施設の管理」などで、調査項目は1,000項目以上にも及びます。また、認証を継続させるためには3年に1度の再受審が必要であり、質の維持や向上が求められます。 この認証は米国以外の医療機関が受審することができ、世界では54カ国・地域、558施設が認証を受けています(2013年6月現在)。そのため世界的に認知されており、海外で医療行為を受ける際の病院選択基準になっています。アジア各国ではタイ、韓国、インドなどの医療施設が認証を受けており、海外からの患者を受け入れる医療ツーリズムが盛んです。一方、日本で認証されている医療機関は老人保健施設1つを含む7施設にとどまっています(2013年6月現在)。

    海外でのJCI認証取得動向

    JCI認証数が最も多い国はアラブ首長国連邦、続いてサウジアラビアとなっており、GCC(Gulf Cooperation Council、湾岸協力会議)諸国6カ国で、全認証数の約24%となっています。以下ブラジル、タイ、トルコ、韓国、中国、インドと続きます。日本を含むアジア(13カ国・地域)の取得数は約34%を占めており、地域別では最も認証数が多くなっています。なお、認証取得病院数が最も多いのがサウジアラビア、医療研究機関ではアラブ首長国連邦、CCPC(Clinical Care Program Certification、疾患別認証)ではタイとなっており(2013年6月現在)、国ごとに特徴がうかがえます。 アジア各国では、JCI認証を取得することが、海外の患者を誘致する上で有利になると考えられます。中東地域では、近年の人口増加や高齢化により医療の需要が増えています。また両地域ともに、富裕層の増加により、高度な医療環境を求めて渡航する人が増えています。JCI認証を取得することで、このような富裕層の海外流出を防ぎ、さらに近隣諸国からの患者を誘致する狙いがあると考えられています。

    JCI認証取得により日本で期待されること

    日本にも独自の「病院機能評価」があり、2012年からは厚生労働省で「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」の申請が開始されましたが、どちらも世界的な認知度は、高くはありません。JCI認証を取得することで、日本の医療が国際基準であることを証明し、日本への関心を高め、医療ツーリズムの活性化につながると期待されます。
    認証基準の一つである「患者との効果的なコミュニケーション」には、表記の多言語化や通訳の充実化が求められます。今後長期間滞在する外国人は増える見込みであり、JCI認証によって、外国人による日本の医療機関へのアクセスが容易となり、暮らしやすさにもつながると考えられます。 また、国内でJCI認証を取得した病院の中には、海外からの患者の受け入れは考えていないが、医療の質の国際基準化と病院改革のために取得したというところもあります。JCI認証という厳しい審査により、体質の改善や質の向上、効率化が期待できます。

    誰もが気兼ねなく受診できる環境を整えることは、訪日外国人の増加を目指すに当たっても必要不可欠であり、その一つの方法が世界的に認知されたJCI認証取得であると考えられます。医療機関の国際化によって国内外での情報共有を図る利便性や必要性が生まれ、ITなどの産業がより発達する可能性があります。また、患者のみならず海外の医療従事者も日本の医療機関に出入りしやすくなることで、職員の派遣や交換研修などが盛んとなり、医療技術や個々の能力の向上、ひいては訪日外国人の増加も図られる可能性があります。JCI認証は、医療機関だけでなく、社会や産業のグローバル化、発展にも大きな刺激を与えるきっかけとなり得ると考えられます。

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