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LEED認証

    所属部署 研究第三部 技術戦略グループ
    氏名:川口亜季子

    I. LEED認証とは

    LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は、米国グリーンビルディング協会(USGBC*1)が開発・運営する、環境に配慮した建物に与えられる認証制度です。建築全体の企画・設計から建築施工、運営、メンテナンスにおける省エネルギーや環境負荷を評価することにより、建物の環境性能を客観的に示すことができることから、米国を中心にLEED認証の取得が拡大しています。

    II. 評価システムと評価項目

    LEEDの認証タイプは対象となる建物などにより異なり、LEED-NC*2(新築・大規模増改築の施設)、LEED-CI*3(テナントビルの入居者専有部分)、LEED-CS*4(テナントビルのオーナー所轄範囲)、LEED for Retail(商業施設)、LEED for Healthcare(医療施設)、LEED for Home(戸建・中低層住宅)、LEED-EBOM*5(ビルの運営管理)など複数の評価システムがあります。

    評価は、七つのカテゴリーで行われ、それぞれ「必須要求項目」と「加点項目」が採点されます。加点項目で取得したポイントの合計に応じて、Platinum、Gold、Silver、Certified(標準認証)の四段階の認証ランクで格付けされます。

    なお、LEED認証は、第三者機関であるグリーンビルディング認証機関(GBCI*6)が実施しています。

    表 LEED-NCの評価項
    評価カテゴリー 必須要求項目 加点項目
    (1)サステナブルサイト(持続可能な立地) 建設活動による汚染防止 (工事中の空気汚染の防止) 自動車の使用の低減、雨水の流出抑制などを考慮した立地選定
    (2)水利用効率 水使用量の低減 (基準値に対し20%低減) 水使用量の低減、トイレや植木への散水における上水利用量の低減
    (3)エネルギーと大気 エネルギー使用量の低減 (基準値に対し10%以上低減) エネルギー効率の高い機器やシステムの利用、再生可能なエネルギーの使用
    (4)材料と資源 リサイクル回収用廃棄物置場の設置 プロジェクトの敷地から半径500マイル(約800km)以内で育成、収穫、生産された生産物や材料の選択
    (5)室内環境品質 全館禁煙または所定の喫煙室のみの喫煙 低発散材料の含有量、昼光と眺望の確保
    (6)設計における革新性 他のカテゴリーには含まれない新しいアプローチや革新的な技術、設計、戦略
    (7)地域的な優先事項 特定の地域で優先される環境問題への配慮項目(汚水処理技術、エネルギー性能など)

    資料:「設備と管理」2012年8月号(オーム社刊)を基に日立総研作成

    III. LEED普及の理由

    LEED認証の取得により得られる定量的な効果として、建物の維持・運営経費の削減、不動産価値の向上、環境配慮を重視する企業の誘致によるテナント入居率の向上が挙げられます。定性的な効果には、施設やテナントの知名度およびイメージの向上、環境税導入や規制強化など将来の費用増加リスクの低減などがあります。USGBCでは認証取得と、運営経費の削減率、不動産価値、テナント入居率との関係をデータで公表しており、LEEDのメリットを明確にしていることが普及の理由と考えられます。また米国では、LEED認証取得による固定資産税の減免措置や補助金制度に加え、市の開発案件への参画にLEED認証を必須とするなど、政策による後押しも普及要因となっています。

    IV. LEEDのデファクト標準化

    LEEDは現在、米国のみならず世界100以上の国と地域に普及しており、近年、特に中国、アラブ首長国連邦、インドなどの登録数が増加しています。アラブ首長国連邦のドバイでは、2008年以降の新規開発案件にLEED認証の登録を義務付けています。中国のグリーン建築審議会は2010年に、USGBCと共同研究や教育プロジェクトなどの相互支援を目的とした覚書に署名しました。これらの背景には、自国の建築市場が他国からの信用を得ることで、投資効果を高める狙いがあると考えられます。

    LEED以外の建物の環境性能評価システムには、日本のCASBEE*7や英国のBREEAM*8などがありますが、国際的な普及の面ではLEEDが最も進んでおり、実質的な世界標準となっています。LEEDの評価がシンプルな加点方式で分かりやすいことから、多くの国で採用されるようになっています。日本では、米国に比べ評価認証取得を条件とした政策やビジネスが普及していないため、積極的には活用されておりませんが、海外に支店を持つ企業や国内に拠点を持つ外資系企業を中心に関心が高まりつつあります。

    V. 地域開発認証への拡大

    USGBCは2009 年より、街区の都市計画・開発の環境配慮基準を評価するLEED-ND*9の運用を新たに開始しました。LEED-NDはイタリアのミラノ市、中国の重慶市などがすでに取得しており、日本では秋田市がスマートシティ・プロジェクトの一環として取得を目指しています。LEED-NDの取得による地域全体の資産価値の向上、エネルギー使用量の低減、維持管理費など自治体の財政負担削減、市民の意識改革によるコミュニティの活性化などの効果が期待されています。LEEDは、今後建物だけではなく、スマートシティの拡大とともに都市開発においても重要な認証制度となると考えられます。

    *1
    U.S. Green Building Council
    *2
    LEED for New Construction
    *3
    LEED for Commercial Interiors
    *4
    LEED for Core & Shell
    *5
    LEED for Existing Buildings Operations & Maintenance
    *6
    Green Building Certification Institute
    *7
    Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency
    *8
    The Building Research Establishment Environmental Assessment Method
    *9
    LEED for Neighborhood Development

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