所属部署 エネルギー・環境グループ
氏名:楊兵
中国低炭素指数とは、事業として低炭素化に取り組む中国ローカル企業の株式を選定して株式指数化したもので、北京環境交易所*1と米国ベンチャーキャピタルのバンテージ・ポイント・ベンチャー・パートナーズ*2が共同で作成しました。2010年6月5日に公表されましたが、その後、中証指数有限公司*3も参画して、指数の再調整が行われ、2011年2月16日に、再度発表されました。
現在、S&P Global Clean Energy IndexやNasdaq Clean Edge Indexなど、グローバル企業を対象とした同種の指数が公表されていますが、いずれも中国企業の割合が極めて低く、このところの急成長によりグローバル市場でも存在感を高めつつある、中国の低炭素関連企業の全体像を反映していません。中国低炭素指数は、こうした課題に対応する指数として注目されています。同指数は、投資家に対して、投資・融資の指針を提供することにより、低炭素化に取り組む中国企業の成長を後押しするとともに、企業イメージの向上にも貢献するといえます。
中国低炭素指数は、太陽エネルギー、風力エネルギー、原子力発電、水力発電、クリーン石炭、スマートグリッド、蓄電池、エネルギー効率(LED照明を含む)、廃棄物処理・汚水処理、という9業種から40企業を選定して構成されています。指数委員会の審査により、毎年、新たな業種が追加されることが可能となっています。2011年8月時点で、9業種の配分割合は図1の通りとなっており、太陽エネルギー、風力エネルギー、廃棄物処理・汚水処理の割合が高いほか、先端技術であるスマートグリッドの割合も高くなっています。
資料:北京環境交易所公表資料
図1:中国低炭素指数の業種別配分割合(2011年8月時点)
選定された40社はいずれも中国(含む、香港)、米国で上場している有力企業であり、例えば、尚徳電力(Suntech Power Holdings Co,Ltd.)、金風科技(Goldwind)、比亜迪(BYD)などは、各業種において世界トップレベルの市場シェアを獲得しているリーディング企業です。
中国低炭素指数は、2006年12月31日を基準に計算され、2007年1月から直近までのパフォーマンスは図2の通りとなっています。
資料:北京環境交易所資料に基づき日立総研作成
図2:中国低炭素指数のパフォーマンス推移
中国低炭素指数は、2007年から上昇の一途をたどったものの、2008年に入りサブプライム問題の影響受けて下落に向かいました。その後、2008年10月に中国政府が発表した4兆元の景気刺激策や1.5兆元を投資する再生可能エネルギー発展計画(2005-2020)などの短期・長期両面の投資計画により、堅調に上昇しています。
今後は、中国政府主導の投資計画が確実に実行されるか、また、世界的に低炭素技術への投資が加速するかによって、中国の低炭素産業の業績は大きく左右されることになります。中国低炭素指数は、中国市場だけでなく、グローバル市場の動向を反映した指標として、今後とも、注目していく必要があるでしょう。
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