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バイオミミクリ(Biomimicry)

    所属部署 エネルギー・環境グループ
    氏名:石原美雪

    バイオミミクリ(Biomimicry)とは

    バイオミミクリ(Biomimicry)とは、自然界、生物の仕組みに学び、そのデザインやプロセスをまねる(またはインスピレーションを得る)という視点で技術開発を行い、社会の問題の解決と環境負荷低減を実現しようとするコンセプトです。米国の研究者・コンサルタントであるジャニン・ベニュス氏が1997年に出版した「バイオミミクリ」で提唱した概念であり、近年、学問領域として確立も図られ、実社会への適用も進んでいます。また、バイオミミクリは、「生体工学(Bionics)」(生物のもつ機能や構造を解析し、それを人工的に再現して利用しようとする学問)や、「生体模倣技術(Biomimetics)」に近い概念ですが、より環境負荷低減、持続可能性実現に重点が置かれています。ベニュス氏は、このコンセプトの提唱と適用により、生物学に基づいた先端的なビジネスの土台を作り上げた功績が認められ、国連環境計画(UNEP)「2009年地球大賞」を受賞しています。

    バイオミミクリが注目される理由

    近年、地球環境保護への関心が急速に高まっている中で、生物の多様性を保全し、生物資源を持続的に利用していく国際的な枠組みの検討も進んでいます。バイオミミクリは、生物多様性の恵みとしての有用性を実現するための手段の一つとして、環境省も挙げており、2010年10月に名古屋にて開催の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を契機として高まりつつある、生物多様性保全の重要なコンセプトのひとつになりつつあります。企業における生物多様性保全の取組みも活発化しており、例えばリコーグループでは、「生態系の仕組みを利用する技術開発の促進」を含めた生物多様性方針を09年に策定しています。

    バイオミミクリ活用の広がり

    バイオミミクリは、企業や大学の研究開発部門において、現在、急速に成長している分野となっています。自然界の仕組みに学ぶ技術の開発促進活動の一つとして、国連環境計画(UNEP)、国際自然保護連合(IUCN)、ZERI財団合同によるプロジェクト「Nature’s Best 100」(世界3,000以上のバイオミミクリ関連技術の中から最も優れた100を紹介する活動)なども実施されています。

    バイオミミクリを取り巻く今後の展開

    2010年10月に開催されるCOP10に向けて、企業の生物多様性保全に対する取り組みが加速する中で、バイオミミクリに基づいた技術開発を進める動きは着実に広がっていくと思われます。バイオミミクリによる技術開発によって、必ず開発目標が達成できるという保証はありませんが、長い年月をかけて構築された自然界、生物の仕組みは、本質的に低環境負荷で持続可能である可能性が高く、われわれが利用可能なものも多々あると思われます。今後、バイオミミクリへの対応の成否で、環境関連のテクノロジー企業の競争力と成長性が左右されることもあるでしょう。

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