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地域情報プラットフォーム

    所属部署 社会・生活グループ
    氏名:平沢徹

    地域情報プラットフォームとは

    「地域情報プラットフォーム」とは、自治体や民間企業などの情報システムが相互に接続・連携できるようにあらかじめ各々のシステムが準拠しておくべきルールを定めた標準仕様です。総務省が主催した「地域における情報化の推進に関する検討会(2003年12月〜2005年3月にかけて計6回開催)」の中で提言され、「財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)」*1が標準仕様書の策定を進めてきました。2008年9月現在「地域情報プラットフォーム標準仕様書V2.1」が公開されています。 地域情報プラットフォームの目的は、SOA*2やXML*3などの手法・技術を活用することにより、異なるシステム間のシームレスなデータ連携を可能とし、自治体などがさまざまなサービスを連携・統合して提供できるようにすることです(図表1)。


    図表1.地域情報プラットフォームに基づくシステム間連携の展開イメージ
    資料:次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム「次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン」(2008年6月)参考資料9、APLLIC「地域情報プラットフォームについて」を基に日立総研作成

    2008年6月に政府のIT戦略本部が決定した「IT政策ロードマップ」では、「2010年度をめどに国民本位のワンストップ電子行政サービス*4の標準モデルを構築し、実用化を目指す」という目標が掲げられています。行政サービスの電子化・ワンストップ化が実現すると、サービスの利用者は窓口へ足を運ぶことなく、各種手続きが可能になるなど、さまざまな行政サービスを手軽に享受することができるようになります。こうしたワンストップ電子行政サービスを実現するには、データなどの標準化によるシステム間の連携が不可欠ですが、そのためには今回のキーワードである「地域情報プラットフォーム」が重要な役割を果たします。2008年6月に「次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム」が策定した「次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン」においても、地域情報プラットフォームに大きな期待が寄せられています。

    地域情報プラットフォーム導入で期待される効果

    地域情報プラットフォーム標準仕様書に準拠したシステム(以下、準拠システム)導入の効果は、大きく二つあります。
    一つは、行政サービスの利用者にとっての効果です。例えば、引っ越しにかかわる届出を行う場合ですが、利用者が転出する際には転入・転出届だけでなく、国民健康保険の資格喪失・加入申請、国民年金の住所変更届、児童手当申請、電力会社・銀行への住所変更届など、多くの手続きを行う必要があります。そのため利用者は、個別に各担当窓口を回らなければならず、その都度書類に記入する手間や移動時間、待ち時間がかかってしまいます。
    しかし、自治体や民間企業などが準拠システムを導入していれば、異なる業務システムであってもデータを相互に活用できるようになります。このため、自治体などが運営し、インターネット上で一元的に申請を受け付ける「ワンストップポータルサイト」から届出を行うことで、関係する複数の手続きを一度に済ませることが可能になります(図表2)。このように準拠システムの導入は、利用者の負担の軽減、利便性の向上という効果を生み出すと考えられます。


    図表2.ワンストップポータルサイトでのシステム連携イメージ(引っ越しに伴う手続き例)
    資料:平成20年度「地域情報プラットフォーム推進事業」実施要領参考資料を基に日立総研作成

    二つ目の効果は、導入する自治体や民間企業にとってのメリットです。準拠システムは仕様が標準化されているため、複数のベンダーの中から最適な製品を選択でき価格競争が促されます。複数の自治体によるシステム共同利用も可能であり、調達コストの削減が可能です。また、システム間連携の実現により、重複するデータ入力作業の削減や申請手順の簡素化が進むため、自治体の業務効率化を図ることが可能となります。民間企業にとっては、地域ポータルサイト上で行政手続きと連動した新たなサービスの開発・提供が可能となり、ビジネス拡大につながることも見込まれます。

    「地域情報プラットフォーム推進事業」で始まる本格的な実用化

    総務省は、「引越ワンストップサービス分野」および「地域活性化分野」におけるワンストップサービスの立ち上げを推進するため、準拠システムの実証実験「地域情報プラットフォーム推進事業」を2008年度から開始しています。


    図表3.地域情報プラットフォーム推進事業
    出典:総務省

    総務省は本事業を通して、準拠システムの導入における制度面や運用面などのさまざまな課題と解決方策などをまとめ、公表する予定です。今回の実証実験により準拠システムの実用化と普及に向けた道筋が明らかになることで、真に利用者の利便性を向上させる電子行政の実現や、自治体業務のさらなる効率化、地域の活性化の実現へ、大きく寄与することが期待されています。

    *1
    地域情報化を推進する基盤の開発、構築、活用などを行うに当たって必要とされる調査・研究、情報の収集・提供、人材の養成などを行うことにより、地域における情報通信の高度化を図り、ひいては我が国の地域情報化の健全な進展に寄与することを目的として設立された組織。2008年8月現在、618の産官学の会員により構成
    *2
    サービス指向アーキテクチャ。大規模なシステムを「サービス」の集まりとして構築する設計手法
    *3
    異なる情報システム間で円滑にデータを連携しやすくするために作られた、データ記述言語
    *4
    複数の行政手続を一か所もしくは一度で完結できる、インターネット上の行政サービス
    *5
    2007年10月に、政府の内閣官房情報通信技術(IT)担当室電子政府推進管理室の下に発足した官民合同の検討チーム。さまざまな行政手続きを、基本的にワンストップで簡便に行える次世代の電子行政サービス基盤の標準モデルを、2010年度を目途に構築することを目指す

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