所属部署 技術戦略グループ
氏名:坂本真理
国連の定義によると、Megacity(メガシティ)とは、1,000万人以上の人口が居住する都市を意味します。表1のように、現在(2005年時点)世界には20のメガシティがありますが、1975年には東京とニューヨーク、メキシコシティの3都市だけでしたので、30年で新たに17のメガシティが登場したことになります。
1975年 | 2005年 | 2015年(予測) | |
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1 | 日本・東京(26.6) | 日本・東京(35.2) | 日本・東京(35.5) |
2 | 米国・ニューヨーク(15.9) | メキシコ・メキシコシティ(19.4) | インド・ムンバイ(21.9) |
3 | メキシコ・メキシコシティ(10.7) | 米国・ニューヨーク(18.7) | メキシコ・メキシコシティ(21.6) |
4 | − | ブラジル・サンパウロ(18.3) | ブラジル・サンパウロ(20.5) |
5 | − | インド・ムンバイ(18.2) | 米国・ニューヨーク(19.9) |
6 | − | インド・デリー(15.0) | インド・デリー(18.6) |
7 | − | 中国・上海(14.5) | 中国・上海(17.2) |
8 | − | インド・コルカタ(14.3) | インド・コルカタ(17.0) |
9 | − | インドネシア・ジャカルタ(13.2) | バングラディッシュ・ダッカ(16.8) |
10 | − | アルゼンチン・ブエノスアイレス(12.6) | インドネシア・ジャカルタ(16.8) |
11 | − | バングラディッシュ・ダッカ(12.4) | ナイジェリア・ラゴス(16.1) |
12 | − | 米国・ロサンゼルス(12.3) | パキスタン・カラチ(15.2) |
13 | − | パキスタン・カラチ(11.6) | アルゼンチン・ブエノスアイレス(13.4) |
14 | − | ブラジル・リオデジャネイロ(11.5) | エジプト・カイロ(13.1) |
15 | − | 日本・大阪・神戸(11.3) | 米国・ロサンゼルス(13.1) |
16 | − | エジプト・カイロ(11.1) | フィリピン・マニラ(12.9) |
17 | − | ナイジェリア・ラゴス(10.9) | 中国・北京(12.9) |
18 | − | 中国・北京(10.7) | ブラジル・リオデジャネイロ(12.8) |
19 | − | フィリピン・マニラ(10.7) | 日本・大阪・神戸(11.3) |
20 | − | ロシア・モスクワ(10.7) | トルコ・イスタンブール(11.2) |
21 | − | − | ロシア・モスクワ(11.0) |
22 | − | − | 中国・広州(10.4) |
発展途上国の急速な都市化については、(1)自然環境の破壊、(2)人口密度に対して未整備な社会インフラ(交通、上下水道など)による生活の質の低下、(3)経済成長を上回るスピードでの都市人口の増加による貧困層の拡大とスラムの形成などの悪影響が懸念されています。とりわけ大気汚染は重大な問題となっており、1995年における主要都市の大気中の浮遊粒子状物質(SPM)濃度が、東京が49?g/m?、ニューヨークが61?g/m?であるのに対し、北京が377?g/m?、デリーが415?g/m?と、WHOが設定する90?g/m?以下という基準を数倍も上回っているという世界銀行の報告もあります。都市化が今後も進むことを前提とした上で、経済成長と都市問題の解決とをバランスさせて、持続可能な都市の発展を実現することが、大きな課題となっています。
一方で都市化のもたらすものが悪影響ばかりではなく、人・物・金・情報の集中によって経済・社会活動が活発化し、都市とその周辺地域の成長をけん引していることも事実です。前述の国連の報告書でも、「都市への人口集中は、一般的に都市中心部への最もダイナミックな経済活動の集中を意味する。このような集中は規模の経済を実現し、さまざまな社会経済の便益(例えば発展を持続するための技術の進展など)をもたらす可能性がある」と述べられています。また企業の視点から見ると、環境破壊の抑制や社会インフラ整備関連のビジネスチャンスが広がる可能性があります。既に欧米勢を中心に積極的な市場参入を進めている企業も見られます。事業化にあたっては、法制度の違いやカントリーリスクなどのトータルリスクマネジメントに加えて、その都市の問題解決につながる(個別の製品・サービスだけではない)総合的なソリューション提供が求められ、これらを実現する事業体制の整備が重要になると考えられます。
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