所属部署 サービス・イノベーショングループ
氏名:中江力
電脳とは中国語でコンピュータのことであり、電脳街とはコンピュータ関連のショップが集中しているエリアを意味する。日本で言えばさしずめ秋葉原であろう。かつて秋葉原は家電や電気部品の販売店が軒を連ねる電気街であったが、1990年代以降PC関連の店舗が主体の電脳街へと大きく変ぼうした。最近ではアニメショップやメイド喫茶が乱立し、おたく街とも呼ばれるようになっている。ある意味で秋葉原は常に流行の先端を反映した街と言えるかもしれない。現在、秋葉原は最先端IT拠点に転換する再開発が進められている。私ども日立総研のオフィスも2006年4月に秋葉原UDXに移転した。
アジアの国・地域にも多くの電脳街が存在する。北京の中関村、台北の八徳路周辺、香港の深水歩、ソウルの龍山などは日本でも知られているが、これらの電脳街は明らかに秋葉原とも様相を異にしている。
例えば、中関村は、PC関連を扱うテナントの入ったデパートが集まっているが、一方で大学・研究機関やIT企業も多数集まるIT産業の集積地であり、中国のシリコンバレーと称されている。八徳路周辺は、パソコンの自作パーツから携帯電話の部品まで、あらゆる電子部品を販売する小規模店舗が集まっている。龍山はPC関連だけでなく家電品販売店も多い。いずれの電脳街でも、とにかく活気に満ちており、小規模店舗が非常に多いこと、最新製品から中古製品さらには海賊品まで販売していること、混沌とした雰囲気、平日でも多数の客で賑わっていることなどが共通している。
アジアの電脳街では多種多様なものが売られているが、PMP(Portable Media Player)やモバイルHDDケースなど、日本ではなじみの薄いものもある。PMPは動画再生用のモバイルプレーヤであり、中国ではフラッシュメモリタイプの小型で安価なモデルが多く、韓国ではHDDを搭載したデジタル放送受信機能付きのものが普及している。中にはゲームやGPSまで搭載する機能満載の PMPもある。モバイルHDDケースは、パソコンがまだ高価でそれほど普及していない中国などでの販売が多い。それぞれの地域の市場ニーズに応じた新たな IT製品が、アジアの電脳街には見られる。中国、台湾、韓国などのIT企業の技術者もそれぞれの電脳街で情報収集していると言う。
最近は、中国、韓国、台湾などへ出張や旅行などで出かける人も多いが、IT産業に携わる人であれば、是非これらアジアの電脳街を見に行かれることをお勧めする。新たなIT市場トレンドの胎動を垣間見ることができると思う。
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