ページの本文へ

TOB

    所属部署 技術戦略グループ
    氏名:嶋田惠一

    TOBとは

    TOBとはTake Over BidもしくはTender Offer Bidの略称です。日本では「株式公開買い付け」と呼ばれており、他社の経営権の獲得(議決権付き株式の3分の1以上の取得など)を目指した株式買い付け方法の一種です。
    株式買い付け方法には大きく(1)市場の中で買い付ける方法と(2)買い付け条件を公開し証券取引場外で買い付ける方法(TOB)の2つがあります。前者は、市場の成り行きに任せて株式を買い進めることになりますが、多くの場合市場での株式の買い占めは対象株式の価格の高騰を招きます。また、買収に失敗した場合に取得済み株式の処分という問題もあります。一方TOBでは、新聞への公開買付公告(買い付け価格、期間などの条件の公開)、財務省への届け出に加え、別途買い付けの禁止などの拘束条件がありますが、買収が失敗した場合、TOBそのものを取り下げることが法的に許されています。

    TOBが注目される背景

    グローバル競争時代、日本においても企業買収が活発になりつつあります。企業買収の主な目的としては、会社を買収した後に優良な資産を売却し利益を得るような短期的視野にたったものや、自社で一から事業を育てる代わりに、他社の事業資産を取り込むことにより、迅速な事業強化、立ち上げを可能にするといった長期的視野にたったものがあります。企業買収の方法としては合併、営業譲渡、株式交換などがありますが、これらは買収対象会社の同意に加え、株主総会の開催といった手続きが必要です。対してTOBを含めた株式買い付けではその必要がありません。そのため、迅速に事業再編を進める手法として注目されています。なお、「敵対的買収」を実行するための手段として採用された場合は「敵対的TOB」、買収の当事者間で合意を経た上で実行される場合は「友好的TOB」と呼ばれています。

    「敵対的買収」との関連 ‐求められるプロの経営者‐

    すべての有価証券報告書提出企業は、TOBの対象となる可能性があると言えますが、特にTOBされやすい企業の特徴としては、株価純資産倍率(株価が一株当たりの純資産の何倍になっているか)が1を切っている、すなわち時価総額よりも保有している資産価値の方が大きい会社、また純利益の割には時価総額が低い会社(市況にもよりますが、20倍から30倍の範囲は割安とみられる傾向があるようです)、上場子会社の時価総額が親会社の時価総額に肉薄、あるいは越えている会社(親子逆転現象)などが挙げられます。親子逆転現象の例としては、イトーヨーカ堂とセブン−イレブン・ジャパンの関係がありましたが、持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスを設立し、グループの事業体制の再構築がなされたところです。
    株価はその株式が生み出す将来キャッシュフローの現在価値の総和です。足元の業績が好調であっても、その企業の将来性に不安があれば株価は下がります。本格的なM&Aの活発化に直面する経営者としては、優れた経営ビジョンの策定と対外発信のみならず、そのビジョンに基づいた事業体制の構築、事業展開などさまざまな形で企業の将来性についての情報発信を継続していかなければなりません。経営者が外からの厳しい評価の目にさらされる時代になったと言えます。

    機関誌「日立総研」、経済予測などの定期刊行物をはじめ、研究活動に基づくレポート、インタビュー、コラムなどの最新情報をお届けします。

    お問い合わせフォームでは、ご質問・ご相談など24時間受け付けております。