所属部署 研究企画室
氏名:銭蔚
物件法草案は、経済における重要な基本法となるため、全人代全体会議の審議を受ける必要がある。従って、物件法が正式に承認されるのは、早くても2007年3月全人代以降となるものと予想される。
中国以外の土地の使用権とマンションの所有権を分けている国では、土地使用期間満了後は、国は毎年逓減という方式で個人から土地使用料を徴収している。一方、中国では、今後、どういう形で土地使用料を徴収するのか、まだはっきりと定められていない。また、将来、私有資産と国有資産の権利が衝突した場合に、どちらを優先させるのかなど、解決すべき問題がまだ数多く残されている。
中国は1949年以降、社会主義の国家となり、私有制を廃止し、公有制を導入した。1978年の改革開放への転換をきっかけに、公有制のほか、民営企業のような私有制も再び登場している。社会主義と市場経済が並存する中国では、国有資産と私有資産のどちらを保護すべきなのか、ずっとあいまいのままとなっている。最近10年間、中国の大都市部では、マイホームブームが起こり、マンションが飛ぶように売れている。私有財産であるマイホームの将来の所属は、国民の強い関心を集めており、財産に関する法律の制定が緊急課題となっている。既存の法律では、土地の所有権は国に属しており、個人は、その土地の使用権を居住用目的として70年間使用することができるとされている。従って、一般の国民が購入したマイホームは、土地の使用権とその上に建っているマンションの所有権を買ったことを意味する。中国の関連法律によると、70年後、土地の使用期間が満了した時、土地の使用権とその地上にある建築物の所有権は、国が無償で回収するとされている。これは、減価償却により、70年後にはマンションの価値がゼロとなることに依拠している。
用途 | 期間 |
---|---|
居住用 | 70年 |
工業用 | 50年 |
教育、科学技術、文化、衛生、体育用地 | 50年 |
商業、娯楽、観光用地 | 40年 |
総合及びその他用地 | 50年 |
今回の物件法の草案では、初めて国が、集団と個人の合法的権利を保護しなければならないことを定めており、公有財産と私有資産を平等に取り扱うべきという方針を打ち出している。また、個人のマイホームについては、70年経過後も、国に土地使用料を支払った上で、継続的に使用することができるとしている。同法案は、住宅区の緑地や駐車場などの所有についても規定を定めている。
中国の物件法とは、財産の所属、利用と保護に関する基本法律である。物件法の制定検討は、1998年から始まり、2006年8月24日に、中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)常務委員会が、五回目の草案を審議し、修正案を提出した。
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