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ICタグ

    所属部署 経営システムグループ
    氏名:山中敦志

    ICタグとは

    ICタグはご存じの通りデータを記録しておく小さなICチップと無線通信用のアンテナを組み合わせた小型装置です。リーダー/ライターと呼ばれる装置と無線通信することによりデータの読み書きができます。さまざまなアプリケーションへの適用が検討されており、実証実験のフェーズから実務適用のフェーズへの移行時期に来ていると考えられます。

    ICタグへの導入インセンティブと課題

    ICタグへのニーズは多岐にわたる業界に存在しています。例えば、製造履歴のトレースフォワード/バックが可能となるトレーサビリティへの適用は食品業界・自動車業界・医療業界で、店頭で陳列している製品にICタグを添付し消費者購買行動を分析するといったマーケティングへの適用は、流通・小売業界で多く見られます。また、生産効率の改善を目的とした事例は、業界を問わずすべての製造現場で見ることができます。
    普及度合いも業界や適用分野によって異なります。導入インセンティブが高く、かつ導入時における課題が少ない分野から実用化が進展していくと思われます。例えば昨今の食の安全に対するニーズは食品業界での普及を後押しする要因となっていくでしょう。一方で、製造現場での生産効率改善ニーズは高いものの、読み取り精度やコストなどの課題により普及にはまだ時間がかかると思われます。

    ICタグを用いたアプリケーションの多様化

    最近は上記以外にもICタグのアプリケーションが多様化している現象が見られます。
    現在日立製作所および日立総研では、経済産業省より委託を受け、「アセットベーストファイナンス事業」について調査をしています。アセットベーストファイナンスとは、企業の動産(棚卸資産や売掛金など)を担保とした融資スキームです。当スキームにおいては、貸し手である金融機関は借り手である中小企業の動産担保を常にモニタリングする必要があり、モニタリングツールとしてICタグの活用が想定されています。貸し手である金融機関は、財務情報以外の生産活動情報(在庫の回転率や歩留まり率などの情報)が捕捉・分析できるようになるので、与信精度の向上というメリットを享受することができます。このように、従来の物流情報の捕捉、マーケティング戦略への応用、生産効率の改善といった利用目的だけではなく、新たな金融サービス実現のための重要なツールの一つとしての活用事例は、ICタグのアプリケーションの多様化を示す好例であると言えると思います。

    結び

    この原稿の執筆中に、ICタグに関する新たな記事を読む機会がありました。内容は、米国のあるセキュリティサービス会社が社員の体にICタグを埋め込み、個人認証に使い始めたというものです(2006/02/14、日本経済新聞 朝刊)。ICタグのアプリケーションの多様化が進み、セキュリティに対するニーズを満たすことが可能になるメリットは理解できるものの、プライバシー問題とどのようにバランスをとるのかを個人的には懸念しています。

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