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【短期経済予測】25年の世界経済は3%成長維持も、貿易戦争エスカレート回避が条件

    2025年2月28日

    1.世界:3%近傍の成長維持を予想も先行き不確実性は大きい

    世界経済は、多くの国で政権が交代し、米トランプ政権の貿易政策の影響をはじめ不確実性が急速に高まっている。貿易戦争の際限ないエスカレートは回避されるとの前提で、25年から26年にかけて3%近傍の成長が続くとの見通しをメインシナリオとする。ただし、@トランプ政権の自国優先主義政策の影響拡大、A米インフレ再燃に伴う金融市場混乱、B中国の景気腰折れと社会不安増大および過剰輸出問題のエスカレートなどが主たるリスクとなる。また、2つの戦争の停戦に向けた動向や、データセンター需要の急拡大に伴うエネルギー需給ひっ迫とそれに対する対応は、経済にとってプラス・マイナス両面の影響を持ち得ると考えられる。世界成長率は25年3.2%、26年3.1%。

    2.米国:内需がけん引し、25年の米経済は好調。トランプ政権の政策は正負両面の効果

    米経済は好調を維持している。トランプ大統領による企業寄りの規制緩和や対米投資を強く促す政策は、米企業の景況感を改善し、景気を押し上げる見込み。他方、自動車など広範な財に関税が賦課された場合、家計負担の増大を通じて徐々に国内経済を下押す可能性がある。需要が強いことからインフレ率は高止まりし、FRBは25年の政策金利を据え置くと予想する。25年のリスクは、米国のインフレ再燃とFRBの利上げによる株価の急落など金融市場の混乱となる。米国の実質GDP成長率は、25年2.4%、26年1.8%。

    3.欧州:内外の経済政策の不確実性は高く、25年の欧州経済は停滞

    ユーロ圏経済は景気の減速が続いている。24年10-12月期の独仏経済はいずれもマイナス成長となった。両国の政局混乱は政策の不確実性を高め、内需を抑制している。25年は米国の関税賦課となれば対米輸出を押し下げる一方、国防費増額は景気を下支えする見込み。ECBは2%まで政策金利を引き下げた後は、据え置くと予想する。英国は製造業の景況感が悪化し、BOEは継続的な利下げを実施すると予想する。ユーロ圏の実質GDP成長率は、25年0.9%、26年1.2%。英国の実質GDP成長率は、25年1.0%、26年1.4%。

    4.中国:米国の追加関税で輸出減少、政府は内需下支えも、25年の中国経済は減速

    中国経済は、刺激策の効果や持続性が限定的で、停滞している。輸出は、米国の10%追加関税賦課を受けASEAN・中東向けや迂回輸出が増えるが、24年比で減少の見通し。製造業・インフラ投資は政府の支援策拡充により堅調を維持するものの、日本企業など海外からの直接投資は減少が続く。不動産価格は大都市では回復傾向も、地方では引き続き下落。消費は、政府の買替促進策の効果が発現する一方で、資産デフレや雇用不安によるマインド低迷により、大幅な回復は見込み難い。実質GDP成長率は、25年4.4%、26年4.2%。

    5.日本:消費と設備投資がけん引し、25年の経済は回復へ

    25年の日本経済は、引き続き強いインバウンド需要や、DXやGX推進、企業の高収益を背景にした設備投資などもあり、緩やかな回復を予想する。ただし、消費については、想定よりも長引く物価高により、回復は年央以降に後ずれする。輸出は、中国を除くアジア向けが牽引するものの、米中向けを中心に、先行きは下振れリスクも存在する。日銀は25年内に0.25%の追加利上げ実施の見込み。日本経済は回復が予想され、実質GDP成長率は、25年1.6%(年度1.2%)、26年1.1%(年度1.3%)。

    6.インド・ASEAN:インドは6%台、ASEAN5は5%近傍の安定成長が続く

    インドは、インフレが安定し中銀が景気配慮の利下げに踏み切った。ルピー安による輸入インフレに警戒しつつも金融面からの下支えに加え、所得減税などの財政政策も見込まれることから、25年度6.4%、26年度6.3%と高成長維持の見込み。ASEAN5も安定成長が続くと予想するが、米国の貿易政策の影響や中国経済の動向に影響を受ける可能性がある。ベトナムなど大幅な対米黒字を抱える一部国は特にトランプ政権の通商政策に注意が必要。ASEAN5の成長率は25年、26年とも5.0%。

    世界経済の見通し(実質GDP成長率)

    世界経済の見通し(実質GDP成長率)
    注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる。ただしインドは年度ベース
    ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
    実績はIMF、予測はIMF(ブラジルおよびロシア)、日立総研(その他)

    日本経済の見通し

    日本経済の見通し
    注:端数処理により、数値の合計が一致しない場合がある
    資料:内閣府ほか、予測は日立総研

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