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【短期経済予測】23年はインフレ・金融政策の転換点、景気は足踏み後24年に回復

    2023年3月3日

    1.世界:23年はインフレ安定化と利上終了で、年終盤から24年に向け回復加速

    世界経済の回復は、23年半ばにかけて足踏み後、インフレ安定化と金融政策転換(利上げ終了)を背景に、年終盤から24年に向けて徐々に加速。世界成長率は22年の3.4%(実推)から23年は2.7%に減速後、24年は3.1%。中国急回復による23年経済の上ぶれ可能性は、供給制約圧力の再増や、インフレ長期化を誘因、米国の引き締め継続による23年後半からの経済失速リスクなどに留意要。

    2.米国:24年に景気は回復も、追加利上げに伴う失速が経済リスク

    米経済は、引き続き個人消費や設備投資の回復基調は弱いものの、現状、雇用は底堅さを維持。他方、FRBの利上げを受け、企業景況感は製造業を中心に悪化。雇用の悪化は、23年半ばまでに顕在化する公算大。インフレ率は上昇に歯止めがかかり、23年末にかけて徐々に低下。FRBは利上げのペースを緩和し、政策金利は23年5月に5%台前半まで上昇の後、据え置かれると予想。23年の経済リスクは、インフレ再加速に伴う追加利上げを受けた景気オーバーキル。実質GDP成長率は、23年0.9%、24年1.4%。

    3.欧州:23年はインフレ継続も、中国経済回復で景気悪化は軽度

    ユーロ圏経済は、インフレにより主要国で引き続き消費が低迷。他方、23年初にかけて、天然ガス価格が下落に転じたことや、中国経済が回復に転換したことなどを受け、企業活動が回復、23年の景気悪化は軽度。物価上昇の中心は、エネルギーから食料品にかわり高止まり。ECBは、3%台前半まで預金金利を引き上げると予想。英国経済は、22年末以降のストライキにより、23年は厳しいスタート。高インフレと利上げに伴い内需が低迷、23年は景気後退。ユーロ圏の実質GDP成長率は、23年0.6%、24年1.4%。英国の実質GDP成長率は、23年▲0.7%、24年1.2%。

    4.中国:コロナ政策転換と消費促進により、23年の成長率は5%台前半に回復

    中国は、コロナ政策転換に伴い人の移動が増加。23年前半は対面サービス消費などの回復が進むものの、一部地域では感染急増による活動制限再発動のリスク残存。23年後半には、感染拡大一巡とウィズコロナ定着で社会・経済は正常化が進む。全人代における成長率目標は5%台を想定、消費回復と雇用改善を重視。不動産市場は停滞継続も、金融機関の経営危機につながるリスクは低位。成長率は23年5.2%、24年5.4%。

    5.インド・ASEAN:利上げの累積効果と外需減速が経済下押しも、総じて底堅い成長維持

    インドはインフレ圧力残存も、資源価格を中心に輸入コストの低減などから今後徐々に物価は安定、利上げは23年春で休止見込み。インフラ投資主体の内需増加により23年度の成長は底堅さ維持。成長率は23年度6.0%、24年度6.5%。ASEAN経済は、総じて堅調、各国利上げは23年央までに休止。インバウンド需要増の一方、利上げによる投資など内需下押し、欧米減速による輸出下押しはリスク。成長率は23年4.7%、24年5.1%。

    6.日本:消費と投資の回復が継続、23年中の金融政策の修正を想定

    政府の旅行支援策やインバウンドの回復により、消費は足元で堅調。春闘では物価上昇を踏まえ、3〜6%程度の賃金改善要求がされており、実質賃金の回復により消費マインドは改善。日銀は新体制にて、金融政策正常化への市場圧力の高まりを受け、23年中に長期金利操作によるイールドカーブ・コントロールの修正・撤廃を行う可能性。設備投資は、海外経済の減速による、製造業の業況悪化で、緩慢な回復。原油原材料価格の高騰は一服も高止まりが続き、経済回復は内需に依存。経済成長ペースは緩やか。実質GDP成長率は23年度1.1%(23暦年1.4%)、24年度0.8%(同0.8%)。

    世界経済の見通し(実質GDP成長率)

    世界経済の見通し
    注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる。ただしインドは年度ベース
    ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
    資料:IMF、予測は日立総研

    日本経済の見通し

    日本経済の見通し
    資料:内閣府ほか、予測は日立総研

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